ファイバレーザーのこと

今や加工用途の産業用レーザーに限れば80%以上がファイバレーザーらしい。
私も20年前なら「何それ、すてき。新しい」と思ったものですが、まさにこの20年ですっかりパワーレーザーの市場をも席巻して、すっかりセンターに定着しました。
まだ秋葉原が電気街だった1980年代の風景を今のアキバから想像もできないように、ファイバレーザーがパワー用途の主役でなかった頃の様子がどんなだったかを思い出せません。

昔話

以前に聞いた話。
1990年代以前はファイバレーザーといえば通信技術でした。情報トラフィックの大容量化への過大な期待は光通信(といってもケータイ販売のあの会社のことではなく、技術フィールドのそれですが)バブルとなり、そして弾けました。一時的に行き場を失った通信用ファイバレーザーのリソースが活路の一つをハイパワーに求め、それまでErの1.5um帯が中心だった技術をよりパワーが得られるYbの1um帯に集中した結果、急激な基礎技術の立ち上がりを達成した、と。そしてその高い可能性に魅力を感じたのか、それともよほど旨味があると思ったのか、腕に覚えがある会社もない会社もこぞってファイバレーザーの開発を始めたと。もちろん日本国内にも勢いよくリソースを突っ込んだ会社がいくつもあったそうです。

そして今の状況

しかし10年ほど前までの群雄割拠の時代を経て、現在はメインプレイヤーの数がかなり絞られてきた感はあります。結局のところ加工用レーザーという最大のパイを持つフィールドで勝つためには、レーザーを構成する要素技術と部品を持っていなければ勝負にならないということかと思います。つまり垂直統合によって競争力が高まるタイプの製品市場だということです。
それまでファイバ技術を持っていなかったところは必要な技術を会社ごと買い取り、グループとなって今に至る。ようやく収まったという印象です。

しかし従来のレーザーがそうであったように、大手企業の標準製品では飽き足らないユーザーが存在しています。そのため国際的に見れば小さいファイバレーザーメーカーも、汎用性はないけれどとんがった仕様を持つフィールドで健在のようです。大水が出た川の、水が引いた後の水たまりに小魚が取り残されてもしぶとく生きているような、と言うとたとえが悪いか。ダイオードレーザー以外はその価格から先端的用途に限定されますが、そのような用途では汎用品が適用できないため、小さいセグメントが生き残る。レーザーあるあるですね。

利点と欠点と

ファイバの優位性も欠点も、光がファイバで空間的に閉じこめられていることに由来しています。
優位性としては高効率で取り回しがよく、装置としてのデザインの自由度が高く、外的影響を受けにくいこと。そして高出力のファイバ結合ダイオードと組み合わせ、それまでのレーザーと比較して異次元の耐久性を実現したこと。安定性と耐久性に重点が置かれる産業用に急速にシェアを伸ばしたのは当然といえる特徴です。
一方、光が媒質中を伝搬するためファイバや部品の損傷とか、損傷まではしないものの光の特性が伝搬中に変化する効果が起きやすく、適用できる光強度の限界が低いのがウィークポイントで、短パルス等高強度を必要とする用途ではやや分が悪いわけです。

今でもファイバの持つポテンシャルを加工用やハイパワーアプリでなくとも活用したいと思う人はいるようです。光学定盤にふんぞり返って、自分は1歩も動くことなく(そりゃ、動けませんけどね)冷却水だの、清浄な空気だの、要求ばかりしてくるレーザーに辟易しているのでしょう。

お前はあれか?王様かなにかか?

言いたくなる気持ちはわかります。
ただ、コンパクトで横の棚にポンと置け、パッチコード1本で取り回せるというステレオタイプによって、ファイバレーザーはものすごく印象がいいのですが、たいてい上記のファイバの欠点がネックとなって適用不可ということが多いんです。

フラクシ、再びファイバをいじる

しかしながら、今まで知らなかったフィールドで、ファイバの優位性がピタリとはまる応用もないわけではありません。つまり今でも汎用ファイバレーザーでは対応できない新しい用途が現れつつあります。

フラクシも一時期ファイバに熱心に取り組んでいたのですが、近ごろすっかり疎かにしていました。
しかし今、あるきっかけでちょっとリスタートがかかりそうです。ファイバレーザーを作るという面から再び世の中に目を向けてみると、数年前と変わったところと変わっていないところがありますね。部品も一部は進歩して、完成後のレーザーのポテンシャルも高まったように思います。

楽しみです。

fiber laser

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